大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

長野家庭裁判所岩村田支部 昭和29年(家イ)63号 審判

申立人 木村順子(仮名)

相手方 木村啓一(仮名)

主文

一、申立人と相手方は離婚する事

二、相手方は申立人に対し金五万円を財産分与として昭和三十年六月末日までに支払うべき事

三、相手方は申立人に対し、財産分与その他名義の何たるを問はず一切の請求を為さざる事

四、本件調停手続に要した費用は当事者双方の各自弁とする

理由

申立人は相手方に対し当裁判所昭和二十七年(家)イ第四二号離婚家事調停事件の調停条項によつて夫婦同居を求めたが相手方はこれに応じないので本件夫婦同居請求の調停を申立て当裁判所の調停委員会は十回に亘つて調停を試みたが当事者夫婦の同居は至難なる事情があつて実現の見込みがなく反て当事者は互に離婚する意思を有つておることが認められるに至つたが申立人は財産分与を同時に定めるにあらざれば離婚の調停成立を容認しない態度であつて、その請求額は金十五万円である、一方相手方は即時調停離婚を希望するが財産分与額は金一万五千円を三回に分割支払いしたい、これを超える分与は応じかねる旨述べ、当事者双方は互に自説を固執して譲らず調停は成立するに至らなかつたのである、併し乍ら当裁判所はこの事件を解決する必要と理由の存在を認めたから調停委員の意見を聴き一切の事情を観察し当事者双方のため衡平に考慮した結果当事者を離婚させ且つ相当額の金銭等財産上の給付を命ずることが当事者双方の為最も実情に添うものと思料する、仍て主文第一項乃至第三項の通り審判し本件調停手続に要した費用は当事者双方の各負担とする

(家事審判官 馬場三次郎)

参照

事件の実情

1、申立人は相手方の妻であります。

2、申立人は相手方と昭和二四年四月に結婚いたしました。

3、申立人は昭和二五年四月○○日長女春子を分娩いたしましたが相手方と婚姻以来兎角意見が合わず屡々実家に戻つておりましたがその間調停外上野よね、木村太一、田原豊、中松次男氏を介し婚家に帰宅しましたが相手方の毋木村さちより虐待を受け食糧につき制限されたる関係上同居できず実家に帰つている内に申立人は病気となり療養しつつ長女春子を養育しておりましたがその間相手方は申立人を一向に顧みないので遂に御庁昭和二七年家(イ)第四二号離婚調停を申立ていろいろと御骨折を願いました結果別紙調停調書記載のとおり調停が成立いたしました。

4、然る処相手方は申立人の病気療養費及長女春子の養育費の支払をなさないので任意十数回も請求してようやく昭和二八年一一月迄の分を受領しましたがその余の支払に応じてくれません。

5、その後申立人の膝下で養育していた長女春子は本年九月○○日不幸病死いたしましたので子供も抱えておらず独身となり身体も大体回復いたしましたので此の際前調停条項の如く相手方と同居して将来円満の家庭主活を致したい念願からこの申立をいたしました次第であります。

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例